私たち人間にとってカニ殻は、単なるやっかいなゴミでしかありませんでした。
それが今や、人類にとって有用な資源になりうることがわかったのです。
カニ殻に含まれるキチン質には人体に有用な成分があることがわかりました。
ただカニ殻に含まれるキチン質そのものは高分子であるため、たとえ体内に
とりこんでも、消化吸収されにくい物質です。
そのためカニ殻などを分解して有用成分だけを抽出する研究がなされる
ようになりました。
カニ殻にはキチン質以外にもタンパク質や炭酸カルシウムがほぼ同じ割合で
含まれています。
そこからキチンだけを取り出すには、それらの余分な成分を取り除く
必要があります。
カニ殻を稀アルカリに浸してタンパク質を取り除きます。
それをさらに稀塩酸に漬けてカルシウムを取り除くとキチンだけが残ります。
こうして抽出されたキチンは、化学的には「アセチルグルコサミン」が
連なった巨大ポリマー(高分子)です。
これは糖の分子が数百万個も連なった大きなかたまりで、そのままでは
体内に吸収されません。
そこでもう一度、キチンに化学的処理を施してアセチルグルコサミンから
アセチルをはぎとってしまう方法が考えだされました。
これを「脱アセチル化」といいます、そしてキチンを脱アセチル化して
精製したものがキトサンであり、このプロセスを一般にキトサン化と呼んで
います。